« 経営者の条件 | トップページ | 仕事に効く 教養としての 世界史 »

2014年4月15日 (火)

経済人の終わり

このブログは自らの学びのために書いています。

今回は「経済人の終わり」です。
 
 
00120thumb208xauto8288
 
経済学の巨人、ドラッカーの処女作。
1939年当時29歳だったドラッカーによるファシズム全体主義を分析・理解しようと試みた内容である。
当時、ヨーロッパを席巻したファシズム、そしてヒトラーの出現により台頭したナチズム。
それらの要因を分析し、より良い未来を作る手助けをする事が本書の目的であった。
 
当時のヨーロッパ諸国において、資本主義や社会主義では恐慌と戦争という社会問題を解決できない事が問題視されていた。
「経済的な自由を実現すれば個人の自由と平等がもたらされる」という信条が誤っていたために、資本主義や社会主義の秩序が解体され、(エコノミックアニマルとして知られる)「経済人」の概念も崩壊を迎えていた。
すでに経済発展では恐慌は防ぐ事ができず、(自由や発展という事であれ)不安定なものを排除する流れができていた。
 
ファシズム全体主義は、それまでの資本主義や社会主義で肯定されていた概念を全て否定する事からスタートする。
軍国主義をすすめ、上級層への規制を強め、職業地位をはく奪し、消費を管理する。
確かに軍国主義は、完全雇用を生み出すし、非経済的な満足を用意することにより、脱経済化を達成しうる。
しかし、軍国主義である為には戦争を正当化し、善きものとする必要がある。
実は戦争の合理化は(作り上げた社会を壊す事であるので)社会そのものの否定であり、そのような合理化は不可能なのだが、完全な悪としての敵を作ることで、そのような合理化を図ることになる。
ナチスドイツにおけるユダヤ人迫害などは、その最もたる例である。
新しい信条、社会的価値観が生まれてくる事によりファシズム全体主義は崩れさることが明らかだったが、そのようなファシズムの崩壊は第2次世界大戦が終結するまで持ちこされる事になる。
 
すでに民主主義を採用していた西ヨーロッパ諸国において、ドイツやソ連といったファシズム諸国は脅威であった。
独ソ開戦により、これらの国々が潰し合ってくれる事を各国は望んでいたが、ドラッカーはそれが夢に終わるだろう事を予期しており、驚くべき事に両国の同盟すら予言していた。
ドラッカーの予言通り、独ソは同盟を組み、ポーランドへ進軍、第2次世界大戦へと向かっていく。
 
29歳という年齢、初めての出版であるが、すでにイギリスのチャーチル元首相に絶賛されている。
知の巨人としての彼が、その片鱗を見せる作品であった。
 
ナチズムの台頭や戦争、ユダヤ人虐殺を昨夜の悪夢として片付けるのは簡単だ。
だが、本当にこの時代を知る人が少なくなる昨今、歴史を分析し、よりよく理解する事こそ、その再来を防ぐ事ができる、と著者は締めくくる。
戦争に向かっていった日本人として、その歴史を再び理解する事が、戦争を再び起こさないために重要だと感じた。
歴史を隠ぺいしたり捻じ曲げたりするのではなく、反省し正しく理解する事を意識したいと感じる読書であった。

|

« 経営者の条件 | トップページ | 仕事に効く 教養としての 世界史 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1166152/55784784

この記事へのトラックバック一覧です: 経済人の終わり:

« 経営者の条件 | トップページ | 仕事に効く 教養としての 世界史 »